フィリピン:公共施設・住宅環境改善プロジェクト

プロジェクト概要

第2回国際環技術専門家会議でも数多くの国内エネルギー技術が紹介されましたが、中でも遮熱塗料技術に高い関心を示したのが、フィリピン・ソルソゴン市でした。ソルソゴン市は、多くの島からなるフィリピンの自治体の中でもサイクロン、洪水、火山の噴火、海面上昇など自然災害リスクの大変高い都市であり、市民の環境意識や気候変動問題に対する注意を喚起するために、2009年以降国連ハビタットの「気候変動と都市」プログラムのモデル都市として、環境技術の導入、省エネの普及・啓発、環境教育や自治体職員研修の実施など様々な取り組みを行っています。

ソルソゴン市の気候は、年間平均気温27度、降水日数200日と高温多湿です。学校、住宅、商店などにはトタン屋根が広く使われており、外気よりも室内温度は高くなります。扇風機のある住宅もありますが、電気料金は日本よりも高いといわれています。会議に出席したディオネダ市長は、遮熱塗料を学校や公共の建物の屋根に塗装することで、扇風機やエアコンの使用に頼らず、環境に配慮した持続可能な方法で、住環境の改善が実現できると考えたのです。

技術紹介

今回のパイロット事業で、ソルソゴン市側の強い要望で選ばれたのは、「ミラクール」という遮熱塗料です。屋根など建築粒の表面に塗装することで、室内温度の低減など高い遮熱効果を発揮します。フィリピンをはじめ、東南アジアの多くの国は熱帯に属しており日中の気温は大変高くなりますが、「ミラクール」は、クーラーや扇風機など電力を消費する設備を設置することなく、室内温度を下げることが可能であり、また塗装後の維持管理も必要ないことから、持続可能であり、かつ途上国での使用に適しているといえます。

参加団体:株式会社ミラクール、フィリピン・ソルソゴン市

レポート

パイロット事業は、2011年3月に実施されました。小学校、公民館、低所得者用住宅(災害リスクの最も高い海岸沿いの脆弱な地盤に居住していたコミュニティを内陸へ移転したプロジェクトによって建てられた住宅)3軒が対象となりました。地元のベテランペンキ職人が手際よく遮熱塗料「ミラクール」を塗装したところ、塗装前に50度だった教室の屋根は、塗装後は32度にまで温度が下がり、屋根に触れてもひんやりするほど効果はすぐに現れました。現在、デジタル温度計による長期計測がそれぞれのパイロット場所でソルソゴン市によって継続実施されており、外気温、塗装済教室と未塗装教室や住居の温度の比較、節電効果などの分析を行う予定です。

関連資料

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