その日暮らしを超えて―教育がひらく未来への一歩

ラオス南部チャンパサック県の大学生、ヴィライフォン・パカシーさん(愛称タッキー、22歳)は、家族で初めて大学に進んだ若者です。幼い頃に父を亡くし、厳しい暮らしの中で育ちながらも、教育によって未来を切り拓こうとしてきました。ボランティア活動を通じて視野を広げ、いまは自らの経験を力に、故郷のような地域で人々の暮らしをよりよくする仕事を志しています。

タッキーさんは、2025年10月に開催されたラオス国家都市フォーラムを支えた100人の学生ボランティアの一人です。物静かでありながら細やかに気を配り、与えられた役割に誇りを持って向き合っていました。

2025年12月に改めて話を聞く中で、彼女がこれまで歩んできた道のりが少しずつ見えてきました。

現在、チャンパサック大学の最終学年で経済学と経営学を学ぶタッキーさんですが、この分野を選んだ理由は、最初から強い情熱があったからではありませんでした。「実用的な」分野を選ばなければ、将来、仕事を見つけるのが難しいかもしれない――そんな不安が、進学を考える出発点にあったのです。

彼女にとって大学進学は、決して当たり前のことではなく、大きな挑戦でした。その思いの強さを象徴するのが、大学入学試験の日の記憶です。試験を受けるため、彼女は雨の中をバイクで2時間走りました。不便さを感じるよりも、「この機会を逃したくない」という思いのほうが強かったといいます。

幼少期の暮らしは、決して平坦ではありませんでした。父親は彼女が生後11か月のときに亡くなり、その後まもなく、兄と母は家計を支えるために隣国へ働きに出ました。彼女は母方の祖父母に育てられ、愛情に包まれながらも、多くの制約の中で成長していきました。

そうした家庭環境の中で、何より優先されるのは「生きていくこと」でした。仕事とは、何年も準備を重ねた先にあるものではなく、できるだけ早く始めるべきものだったのです。それでも彼女は、幼い頃から、ただその日をしのぐだけではない未来を思い描いていました。家族がただ生き延びるだけでなく、もっと安定し、よりよく暮らしていける未来です。

彼女がボランティア活動に関わるようになったきっかけは、SNSでした。近隣諸国の若者たちが地域のために行動する姿を見て、「本当にすてき」だと感じたそうです。その後、学校でボランティア活動をしていた先輩たちと出会い、自らもグループに加わりました。やがて、その活動に夢中になっていきました。

「ボランティアは、与えることだけではありません。むしろ、自分のほうがたくさんのものを受け取っています」

そう話すタッキーさんは、活動を通じて、教室の中だけでは学べない多くのことを身につけてきました。人と関わる力、伝える力、まとめる力、耳を傾ける力、そして人を導く力です。活動の進行役を任されたり、周囲を支える役割を担ったりする中で、思いがけず、自分の中にあるリーダーシップにも気づいていきました。

パークセーで暮らし、新しい考え方やさまざまな経験に触れてきたことも、彼女が思い描く将来を形づくってきました。卒業後は、自分の故郷のような地域で、人々の暮らしをよりよくする組織で働きたいと考えています。

彼女の原点には、水にまつわる記憶があります。小学生の頃、昼休みになると友人たちと一緒に学校のそばのメコン川まで坂を駆け下り、水を飲みに行きました。手ですくってそのまま飲むことに、当時は何の疑問も持たなかったそうです。ただ喉が渇いていたからでした。家庭でも、掃除や家事にはメコン川の水を使い、飲み水や料理に使う水は煮沸していました。市販の飲料水を家庭で使えるようになったのは、ほんの10年ほど前のことだといいます。

こうした経験があるからこそ、彼女は今、安全な水をはじめとする基本的なニーズへのアクセスの重要性を強く訴えています。故郷の村では、いまもなお水道水が当たり前のものではありません。彼女にとって、基礎的サービスの不足は遠い話ではなく、自らの暮らしと直接つながる現実です。

そして教育もまた、彼女にとって未来を変える力そのものです。教育は、目先の収入を得るためだけのものではありません。新たな可能性への扉を開き、困難の連鎖を断ち切り、よりよい未来を築くための土台でもあります。教育があるからこそ、人は「その日暮らし」を超えた選択肢を持つことができます。

大学進学を選ぶまでの道のりは、決して簡単ではありませんでした。家族は経済的には支えてくれたものの、大学進学を無条件で認めてくれたわけではありませんでした。彼女は、なぜ学びたいのか、なぜこの道を選ぶのかを自ら説明しなければなりませんでした。だからこそ今、彼女はこの4年間を無駄にせず、教育を選んだことが正しい決断だったと示したいという強い責任感を抱いています。

タッキーさんの歩みは、いまも続いています。その姿は、機会が人生を変え、教育が未来をひらき、若者が信頼され支えられたときに大きな力を発揮することを、静かに物語っています。

インタビュー・執筆:アクソネティップ・ソムヴォラチット氏(Associate Development Coordination Officer), Programme Communications and Advocacy, Resident Coordinator’s Office in Lao PDR。

編集:国連ハビタットラオス事務所。年齢はインタビュー当時のもの。原文(英語)はこちらからご覧いただけます:More Than Making Ends Meet: The Bravery to Choose Education | United Nations in Lao PDR

ラオス国家都市フォーラム(LNUF)は、ラオス人民民主共和国政府がUN-Habitatの支援を受けて主導する年次イベントであり、幅広い都市課題について対話を行うためのプラットフォームとなっています。2025年は、開催4年目にして初めて、首都ビエンチャンおよびラオス南部の主要都市であるパクセー市の2都市で開催されました。LNUFに関する情報(英語)はこちらからご覧いただけます:https://unhabitat.la/lnuf/2025/

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