アフガン女性のエンパワーメント:困難な状況に変化を

「人生は困難の連続ですが、最近では特に経済の低迷でさらに困難なものになっています。それでも、私の住むコミュニティで就労の機会を見つけることができた時、人生に再び希望の明かりを灯すことができたような気がしました」

シキバは4人の娘と1人の息子を持つ母親で、アフガニスタンの首都カブール中心部にあるインフォーマル居住区のひとつ、サリ・コタル-シャラク・カミャブ地区に住んでいます。9年前に夫を亡くし、そこから彼女の苦労が始まりました。夫が亡くなった時、一番下の子どもはわずか3歳でした。

「あの時から私は、ひとりで家族の面倒をみなければならなくなり、子どもたちを元気に育て、教育を受けさせるため必死に働いてきました」。 シキバは、家政婦や裁縫の仕事をしながら、子どもたちとの暮らしを支えてきました。収入は決して多くはありませんでしたが、息子の教育のためにノートやペンを買う費用は惜しみませんでした。

シキバ(右から二番目)と子どもたち(左側) ©UN-Habitat Afghanistan

アフガニスタンでは2021年8月のタリバンによる政変後、女性は社会経済的な活動への参加が制限され、様々な課題に直面しています。この制約は、シキバの家庭のように、女性が世帯主となっている家族に大きな影響を与えています。インフォーマル居住区に暮らす女性が世帯主の家庭は、ほかの世帯よりも脆弱な立場に置かれているため、ベーシックニーズを満たすための緊急支援が必要となっています。

シキバが見つけた仕事は、国連人間居住計画(ハビタット)が日本政府の支援のもと実施している「紛争の影響を受けたアフガニスタン人への緊急支援プログラム」の一環で、「キャッシュ・フォー・ワーク」(CFW)イニシアティブの下で行われたものです。このCWF活動は、インフォーマル居住区に暮らす人々に短期間就労して収入を得る機会を提供します。世帯の貧困を軽減するだけでなく、人々のエンパワーメントを促し、コミュニティ主導のアプローチを通じて、地域の発展を促進することを目的としています。

シキバの居住区では、男女計37人から成るCFWチームが、コミュニティ改善のための作業を行いました。彼女は喜んでこの活動に参加し、自分たちのコミュニティをよくするために積極的に取り組みました。

シキバのチームは、排水路からゴミやがれきを丹念に取り除くなど、雨季の洪水リスクを軽減するための作業を行いました。さらに、アクセス道路を整備し、歩行者や車両の安全性と利便性を向上させました。CFW活動の参加者たちは力を合わせて、より清潔かつ安全でレジリエントな生活環境を整備し、居住区に今後も続く成果をもたらしました。

シキバはCFW活動で得た収入を家族のために使いました。「ありがたいことに、息子の学用品をいくつか買うことができました。残ったお金は、家族の生活必需品に充てました」。彼女は日本政府とプロジェクトに携わったすべての人々に深く感謝しながら、「この国にもいつか安定した仕事が増えることを願っています」と語りました。

サリ・コタル-シャラク・カミャブ地区で、適切な衛生管理、ゴミ処理、清潔な水などについて、各家庭をまわって啓発を行うCFW活動の女性参加者たち @UN-Habitat Afghanistan

首都カブールのほかに、国連ハビタットはヘラートでもこの日本政府支援プロジェクトを実施しています。そこでもまた前向きな変化が見られています。

ヘラートのカルタ・マイワンド地区で行われたCFW活動は、脆弱な立場に置かれている45人に、就労の機会の提供を通じた生計支援を実施しました。参加者らは、ローデカローン小学校のグラウンドを整備し、子どもたちが遊ぶためのスペースを造ったほか、校舎の清掃をするなどしました。

参加者の中には、この小学校で教員として勤務するソハイラも含まれていました。「現在、私たちの地域で仕事を見つけるのは難しく、経済的に困難な状況が続いています」。 彼女と同僚の女性3人は、家族を経済的に支えるためにCFW活動に参加することを決めました。

CFW活動が始まると、ソハイラと同僚女性たちは学校の教育環境を向上させるアイデアを考えるように言われました。そして、ソハイラたちは校舎の壁を色鮮やかな絵で飾ることを提案しました。

ソハイラが校舎の壁に描いた絵 ©UN-Habitat Afghanistan

ソハイラは「学校の周りには緑地がないので、木々や花々、青空の下に川が流れる大地を描きました。この絵を通して、生徒たちに平和で安全な環境を感じてもらいたかったのです」と説明しました。

予算の都合で、ソハイラは同僚から絵筆などの道具を借りる必要がありましたが、それでも学校の環境をよくするために貢献できることをうれしく感じていました。

彼女は、生徒たちに一生懸命勉強するよう励ますメッセージを添えて、本やペンなどの絵を描きました。こうした色鮮やかなペイントが学校を活気あるものに変えてくれました。ソハイラは「このプロジェクトは経済的に私たちを支援してくれただけでなく、校舎に活力を注ぎ込み、生徒たちの学習意欲を高めてくれました」と話しました。

ローデカローン小学校に新たな息吹を与えたソハイラの絵 ©UN-Habitat Afghanistan

アフガニスタンでは、ジェンダー平等に配慮したプロジェクトをデザインすることが重要です。女性の参加を促進するとともに、インフォーマル居住区で女性が必要とするサービスやインフラへのアクセスを確保することが求められています。この日本政府支援プロジェクトでは、二つの都市でのCFW活動を通じて、女性たちが完全かつ意味のある形で、社会経済活動に参画できる環境を創り出しました。

人道危機が続く中で、シキバやソハイラのようなCFWの女性参加者たちは、コミュニティ内で変化を引き起こす機会を積極的に捉えています。これにより、コミュニティ全体での女性の役割が増し、さらにはコミュニティに活力を与えています。

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