希望の光:アフガニスタンでマンスールが経験したキャッシュ・フォー・ワーク

「私の人生は楽なものではありませんでしたが、それでも希望を見出すことができました」

アフガニスタンの首都カブールにあるタクニクム地区には、いくつもの課題を抱えたインフォーマル居住区があります。その居住区の住民のひとり、マンスールはパルワン県出身の国内避難民。斜面の中腹にある住居で、家族とともに暮らしています。

マンスールのこれまでの人生は決して楽なものではありませんでした。父親の入院がきっかけで、彼はひとりで大家族を養わなければならない立場に置かれることになりました。イランに働きに出る弟のために借金をして資金を集めたマンスールでしたが、不幸にも弟はイランで亡くなってしまいました。こうした厳しい現実に直面した彼は、自分は社会から見放され、周囲からは笑いものにされ、身長が低い「小人症」のために軽蔑的な呼ばれ方をしていると悲観的に感じていました。

そんなマンスールは、逆境の中、思いがけない形で希望を見出すことになります。それが日本政府の支援のもと、国連人間居住計画(ハビタット)が実施しているプロジェクト「紛争の影響を受けたアフガニスタン人への緊急支援プログラム」の一環で行われた「キャッシュ・フォー・ワーク」(CFW)イニシアティブでした。このCFWイニシアティブは、マンスールが暮らすインフォーマル居住区で、生計支援を必要としている人々に収入を得る機会を提供するとともに、ゴミが捨てられ放置されていた場所を整地し、樹木を植えて公共の公園にするなど地域の生活環境を改善することを目的としていました。

マンスールはこの活動に参加する機会を得ることができました。彼は39人の参加者とともに計21日間働き、広場のゴミを撤去して、公園整備のために400本以上の苗木を植えました。「このプロジェクトを通して、日々の生活に必要な収入を得ることができただけでなく、地域に緑のある清潔な環境を作れたことで自分たちに誇りが持てるようになりました」。

カブールのタクニクム地区で2023年6月、マンスールを含む40人がCFW活動に参加。©UN-Habitat Afghanistan

マンスールはこの活動で得た収入を、家族のために使いたいと考えました。半分は入院している父親の医療費にあて、必要な治療を受けられるようにしました。そして、残りの半分は、靴磨きの道具の購入費用にあて、それをもとに家族のために働くことにしました。「残ったお金を使って、より良い明日のために、今日の自分に投資することを決めました」と彼は話しています。

マンスールは日中、街のさまざまな場所で靴磨きに精を出し、わずかながら日々の収入を得ています。しかし、彼の一日はそこで終わりません。夕方になると、CFW活動で整備された公園に戻り、そこで小さなスペースを設けて、公園を訪れる地元の人々や訪問者の靴を磨き、少しでも多くの収入を得る努力をしています。収入は1日あたり約100~150アフガニ(約1~1.7米ドル相当)。これで家族の食費をまかなっています。

マンスールは、仕事に誠実かつ献身的に取り組み、周囲の人々には友好的に接しました。CFWの同僚たちも彼の頑張りを評価し、公園での友好的な接客は顧客の獲得にもつながりました。そして、その小さな靴磨きビジネスを、マンスールは少しずつ成長させています。CFWを通じて整備された公園は、彼にとってだけでなく、コミュニティ全体にとって、希望と変化のシンボルになっています。 「CFWの取り組みは、私の暮らしを支えてくれただけでなく、以前は放置されていた広場に新しい命を吹き込んでくれました」。こう話すマンスールは、プロジェクトを支援してくれた日本政府と日本の人々に心から感謝しています。彼にとって、今はまだ夢の始まりに過ぎません。これからの目標は、公園を人々の憩いの場としてさらに発展させること、そしていつかそこに自分の屋台を出し、訪れる人をもてなすことだと話しています。

アフガニスタンのカブールで、UN-Habitatのキャッシュ・フォー・ワーク(CFW)イニシアティブに参加したマンスール。
©UN-Habitat Afghanistan

国連ハビタットは、日本政府とのパートナーシップのもと、アフガニスタンでプロジェクト「紛争の影響を受けたアフガニスタン人への緊急支援プログラム」を実施しています。このプロジェクトは、カブールとヘラートの都市部のインフォーマル居住区に住む5万人の国内避難民(IDP)と帰還民の緊急のニーズに応えるため、様々なサービスと必要不可欠なコミュニティ・インフラを提供することを目的としています。

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